キオクシアホールディングス(285A)の株式分割が話題になっています。9月28日が分割前の株を買える最後の日(権利付き最終日)で、9月29日から株価は3分の1の水準で表示され(9月29日の終値は17,880円)、10月1日に持ち株が1株につき3株に増えました。持っている人は「何か手続きが要るの?」、持っていない人は「今買うと得なの?」と気になるところでしょう。
先に答えを言うと、持ち株の価値は変わらず、手続きも要りません。変わるのは「100株を買うのに必要なお金」で、9月28日の終値では533万4,000円だったものが、分割後は177万8,000円になりました。この記事では、キオクシアが7月31日に出した適時開示(PDF)、証券会社の公式案内、日本経済新聞の株価だけを根拠に、日程・仕組み・お金の話を整理します。
この記事は買いをすすめるものではありません。ただ、この分割は「新NISAの成長投資枠で買える金額に収まる」という点で個人投資家にとって意味が大きいので、そこは数字で丁寧に書きます。
結論|10月1日に1株が3株になりました。持ち株の価値は変わらない
🧭 この記事の要点
- 日程 権利付き最終日9月28日(月)、権利落ち日9月29日(火)、基準日9月30日(水)、効力発生日10月1日(木)。1株につき3株の分割
- 持ち株 100株は自動的に300株に。評価額は同じで、証券会社の取得単価の表示が3分の1になるだけ。手続きは不要
- 100株の値段 533万4,000円→177万8,000円(9月28日終値ベース)。新NISAの成長投資枠(年240万円)に初めて収まる
- 分割前に買っても得はしない 価値が変わらない以上、買う理由は「分割後に金額が手頃になる」だけ。同時に決まった自社株買いは、上限8,000億円を8月10日までにほぼ使い切って終了しています
株式分割の日程|9月28日が権利付き最終日、10月1日に効力発生
キオクシアは2026年7月31日の取締役会で、2026年9月30日を基準日として、1株につき3株の割合で分割することを決議しました。目的は適時開示の言葉を借りると「投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ること」です。

| 日付 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2026年7月31日(金) | 取締役会で株式分割を決議・発表。自己株式の取得枠(上限8,000億円)も同時に決議 |
| 9月10日(木) | 基準日公告日 |
| 9月28日(月) | 権利付き最終日。分割前の株を買える最後の日(基準日の2営業日前) |
| 9月29日(火) | 権利落ち日。この日から分割後の株数・株価に調整して売買される |
| 9月30日(水) | 基準日。この日の株主名簿に記載された株主の株が分割の対象 |
| 10月1日(木) | 効力発生日。1株が3株に。発行済株式総数は548,015,088株から1,644,045,264株へ |
権利落ち日の扱いは、SBI証券の案内がわかりやすいです。権利落ち日から売買される株数と株価は分割後の株数・株価に調整されると説明されていて、分割で増えた株は基準日のあとに口座へ反映され、基準日の翌営業日(今回は10月1日)の取引から売却できます。反映のタイミングは証券会社ごとに違う場合があるので、自分の口座の案内も確認してください。
📌 東証が求める「50万円未満」には、まだ届かない
適時開示には、東京証券取引所が望ましいとする投資単位(50万円未満)への移行について「引き続き検討してまいります」とも書かれています。分割後でも100株は約178万円なので、50万円にはまだ遠い。株価水準しだいでは、将来また分割される可能性が会社側の言葉として残されています。
分割で変わるもの・変わらないもの|株数3倍、株価3分の1、評価額は同じ
株式分割は、1万円札を千円札10枚に両替するのと同じです。枚数は増えますが、財布の中身は増えません。キオクシアの場合は1株が3株になり、1株の値段が3分の1になります。

| 項目 | 分割前 → 分割後 |
|---|---|
| 持ち株数(100株なら) | 100株 → 300株 |
| 1株の株価 | 53,340円 → 17,780円 |
| 持ち株の評価額 | 約533万円 → 約533万円(同じ) |
| 100株の値段 | 約533万円 → 約178万円 |
| 取得単価の表示 | 買った値段 → 3分の1に調整 |
| 発行済株式総数 | 約5.5億株 → 約16.4億株 |
| 時価総額 | 約29.3兆円 → 約29.3兆円(同じ) |
| 資本金 | 変更なし(適時開示に明記) |
大事なのは表の3行目です。100株が300株になっても、評価額は1円も変わりません。株数が3倍になった分、1株の値段が3分の1になるからです。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)も、1株当たりの利益や純資産が同じ比率で3分の1になるので変わりません。
100株はいくらになる?|533万円→178万円、新NISAの成長投資枠に収まる
ここがこの分割の、個人投資家にとっていちばん実務的な意味です。9月28日の終値53,340円で100株を買うには533万4,000円が必要でした。新NISAの成長投資枠は年間240万円なので、分割前のキオクシアは1単元(100株)すら非課税枠に入りませんでした。

分割後は100株が177万8,000円(9月28日終値ベース。実際の9月29日終値17,880円では178万8,000円)。成長投資枠に収まり、残りは62万2,000円です。もちろん株価が上がれば必要な金額も上がりますが、「1単元が年間枠の2.2倍」という状態からは抜け出します。なお、個別株はつみたて投資枠では買えず、成長投資枠だけが対象です。
⚠️ 「NISAで買える」と「NISAで買うべき」は別の話です
NISAは値上がり益と配当が非課税になる代わりに、損が出ても他の利益と損益通算ができません。キオクシアのように値動きの大きい個別株を非課税枠で持つと、この不利が効きます。私はこの理由で、NISAでは投資信託の積立を中心にしています。詳しくは新NISA成長投資枠は個別株かETFか|20代はETF90%+個別株10%と【NISAの罠】個別株・株主優待はやめとけ|損益通算できない3つの理由に書いています。
9月29日以降の株価の見方|「急落」に見えるのは分割のせい
権利落ち日の9月29日から、株価は分割後の水準で表示されています。9月28日の終値53,340円を3で割った17,780円が比較の起点で、9月29日の実際の終値は17,880円(始値17,960円・高値18,050円・安値17,185円、出来高41,572,200株)。分割後の起点と比べて100円高(プラス0.56%)でした。何も知らずに見ると「一晩で3分の2が消えた」ように見えますが、これは値下がりではなく、表示の単位が変わっただけです。多くの証券会社や株価サイトは過去の株価も分割後の水準に直して表示しますが、調整前の数字を載せているチャートやアプリでは、9月29日のところに大きな段差が出ます。
| 数字 | 分割前 → 分割後の水準 |
|---|---|
| 9月28日終値 | 53,340円 → 17,780円 |
| 9月29日終値 | — → 17,880円 |
| 年初来高値(6/22) | 112,700円 → 約37,567円 |
| 年初来安値(1/6) | 10,945円 → 約3,648円 |
| 自社株買いの平均単価 | 約49,586円 → 約16,529円 |
今年の値動きを分割後の単位で言い直すと、1月6日の約3,648円から6月22日の約37,567円まで10倍以上に上がり、そこから9月28日の17,780円まで半分以下に下がった、という形です。分割は値動きの激しさを1ミリも和らげません。この銘柄がなぜこれほど動くのかはキオクシアはなぜ注目される?株価急騰の理由を初心者向けに解説で、決算とリスクの両面から書いています。
分割前に買うと得?|答えは「変わらない」。ただし注意点が3つ
「分割前に買っておくと株が3倍になってお得」という言い方をよく見ますが、3倍になるのは株数だけで、価値は同じです。9月28日に533万4,000円で100株を買った人も、10月1日以降に177万8,000円で100株を買った人も、1株当たりに払った値段は同じ17,780円です。そのうえで、持っている人・これから買う人が知っておくべき注意点を3つ挙げます。
🔍 分割で見落としやすい3つのこと
- NISAで使った枠は戻らない 非課税枠の消費額は買ったときの金額で決まります。分割で株数が3倍になっても、使った枠が3分の1になったり3倍になったりはしません
- 取得単価の表示が3分の1になる 特定口座の平均取得単価は自動で3分の1に調整されます。「含み益が急に増えた(減った)」ように見えても、損益額は変わりません
- 売り方の自由度は上がる 100株が300株になるので、100株ずつ3回に分けて売れるようになります。分割前は「全部売るか、持ち続けるか」の二択だった人には実質的な変化です
1株につき3株という整数の分割なので、端数(単元未満株)は出ません。もともと単元未満株のサービスで持っている人も、株数が3倍になるだけです。
同時に発表された自社株買い|上限8,000億円を6営業日でほぼ使い切った
分割と同じ7月31日、キオクシアは自己株式の取得枠も決議しました。上限3,000万株(発行済株式の5.5%)、上限8,000億円、期間は8月3日から10月30日までという内容です。取得枠の開示には、分割の効力発生後は取得しうる株式数の上限が9,000万株に読み替えられることも書かれています。
そして8月10日、16,133,500株を総額7,999億9,768万9,000円で取得して終了したと発表しました。8月3日から10日までの6営業日で、8,000億円の枠をほぼ使い切った計算です。平均の取得単価は1株約49,586円、分割後の単位で言えば約16,529円になります。
💡 分割と自社株買いは「向き」が違う
分割は株数を増やして買いやすくする施策で、価値は変えません。自社株買いは市場に出回る株数を減らして1株当たりの価値を上げる施策です。同じ日に両方を決めたのは、「買いやすくする」と「1株の価値を高める」を同時にやるという意思表示と読めます。ただし、取得した自己株式をどうするか(消却するかどうか)は、今回確認した開示には書かれていません。
私の意思決定ログ|分割は「買う理由」にならない
📝 私の意思決定ログ
私は20代後半の会社員で、夫婦共働き、40歳でのFIREを目標にしています。新NISAは楽天証券でS&P500とNASDAQ100を8対2で積み立てていて、投資の中心はインデックスです。
今回の分割で私の見方は変わりません。分割は価値を1円も動かさないので、「分割するから買う」は理由にならないからです。買うかどうかを決めるのは、この会社の利益がどこまで続くかと、メモリ市況の谷が来たときに耐えられるか、の2つだけ。分割後の単位で見ても今年は約3,648円から約37,567円まで動いた銘柄で、私の資産の中心に置く値動きではありません。
それでも「分割で買える金額になったから、成長投資枠の一部で持ってみたい」という人はいると思います。その場合の私の線引きは、個別株は成長投資枠の1割まで、そして半値になっても積立をやめないこと。分割は入口を広げただけで、出口の難しさは何も変わっていません。
よくある質問
Q. 持っている100株はいつ300株になりますか?売れるのはいつから?
効力発生日は10月1日(木)です。SBI証券の案内では、分割で増えた株は基準日(9月30日)のあとに口座へ反映され、基準日の翌営業日である10月1日の取引から売却できます。反映の時刻や表示のされ方は証券会社ごとに違うので、自分の口座の案内を確認してください。手続きは不要です。
Q. 取得単価や含み損益の表示はどうなりますか?
特定口座の平均取得単価は自動で3分の1に調整され、株数は3倍になります。損益の金額は変わりません。たとえば1株60,000円で100株買っていた人は、20,000円で300株持っている表示になり、9月28日終値ベースの含み損は666,000円のままです。
Q. 配当は出ますか?
2027年3月期第1四半期の決算短信の「配当の状況」では、2026年3月期の年間配当は0円、2027年3月期の予想は第2四半期末が0円で、期末と年間は「-」の表示(数字が示されていない)です。日本経済新聞の予想配当利回りが0.00%と表示されているのはこのためで、配当を目的に持つ銘柄ではありません。
Q. 新NISAで買うなら、分割前と分割後のどちらが得でしたか?
どちらも同じです。1株当たりに払う値段は変わりません。違うのは、分割前は100株で533万4,000円が必要で成長投資枠(年240万円)に入らなかったこと、分割後は177万8,000円で入ること。つまり「得か損か」ではなく「買えるか買えないか」が変わりました。
Q. 9月29日に株価が3分の1になっていました。暴落ですか?
暴落ではありません。権利落ち日の9月29日から、株価は分割後の株数に合わせた水準で表示されています。前日比を見るときは、前日の終値も分割後の水準(53,340円なら17,780円)に直して比べてください。実際の9月29日の終値17,880円は、その起点より100円高い水準でした。
まとめ|変わるのは「買いやすさ」だけ。判断は決算と市況で
キオクシアの株式分割は、9月30日を基準日に1株が3株になり、10月1日に効力が発生します。権利落ち日の9月29日からは株価が3分の1の水準で表示され、100株の最低購入金額は533万4,000円から177万8,000円へ。新NISAの成長投資枠に初めて収まる金額になりました。
持っている人は何もしなくてよく、評価額も変わりません。これから買う人にとっては「入口が広がった」だけで、値動きの激しさも、NISAで損益通算ができない不利も、そのままです。分割は買う理由にならない。買うなら決算と市況で決める。この一線だけ守れば、分割の話題に振り回されずに済みます。
分割後の国内株は100株単位でも単元未満株でも買える
新NISAの成長投資枠で個別株を持つなら、まず口座。私は楽天証券をメイン口座にしていて、投資信託の積立と国内株を同じ画面で管理しています。
楽天証券の口座開設を見る同じ10月1日に1株→15株に分割し、株主優待も新設した東京海上の記事は東京海上の株式分割|1株→15株で100株5万円台、優待も新設に。キオクシアという会社そのものと株価急騰の背景はキオクシアはなぜ注目される?株価急騰の理由を初心者向けに解説に、個別株で損が出たときの扱いは損益通算と繰越控除のやり方|NISAは対象外、損出しの落とし穴にまとめています。
📚 出典
- キオクシアホールディングス「株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ」(2026年7月31日・PDF)
- 同「自己株式の取得枠設定に関するお知らせ」(2026年7月31日・PDF)
- 同「自己株式の取得状況及び取得終了に関するお知らせ」(2026年8月10日・PDF)
- 同「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年7月31日・PDF)
- 日本経済新聞「キオクシアホールディングス(285A)」
- SBI証券「決算・分割等権利付銘柄の取扱」
- 金融庁「NISAを知る」
🕒 更新履歴:2026年9月29日 公開/2026年10月6日 10月1日に分割の効力が発生したため、冒頭と結論を完了形に改めました
🛠 この記事の作り方:分割の比率・日程・株数・目的、自社株買いの枠と実績、配当の状況は、キオクシアホールディングスの適時開示PDFと決算短信から転記しました。権利付き最終日(9月28日)と権利落ち日(9月29日)は基準日9月30日から取引所の一般ルール(基準日の2営業日前が権利付き最終日)で数え、SBI証券の案内で分割時の扱いを確認しました。分割後の株価(17,780円)、100株の金額(177万8,000円)、年初来高値・安値の換算、自社株買いの平均取得単価(799,997,689,000円÷16,133,500株≒49,586円)は当サイトの計算で、10月1日以降の実際の株価は市場で決まります。本記事は制度の整理であり、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。株式は元本が保証されておらず、株価の変動により損失が生じる可能性があります。記載のリンクにはアフィリエイト広告が含まれます。

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